「保釈」
聞いたことがある方も多い言葉だと思います。
「保釈」とは、
起訴された(刑事裁判が行われることが決まった)後にのみ認められる制度であり
逃亡を防止するために保証金を裁判所に預けることを条件(裁判が無事終われば返還される)に
その審級の判決が出されるまでの期間の身柄拘束を解いてもらう制度です。
簡単に言うと、裁判が終わる前に釈放してもらう制度です。
このような制度があるのは、
刑事裁判は、「推定無罪」が原則であって、
本来判決が出るまでは、一般の人と同様に自由が認められるべきであるという考えがあるからだと思われます。
保釈には2つの類型があります(刑訴91条を除く)。
一つは、権利保釈
もう一つは、裁量保釈です。
権利保釈とは、
①死刑、無期もしくは短期1年以上の懲役または禁錮にあたる罪を犯したとき
②前に、死刑、無期もしくは長期10年を超える懲役または禁錮にあたる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき
③常習として長期3年以上の懲役または禁錮にあたる罪を犯したとき
④罪証隠滅をすると疑うに足りる相当な理由があるとき
⑤証人などになりうる者などに対し、害を加え、または畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき
⑥氏名または住所が不明なとき
以上の6類型に該当しない場合であるならば、保釈を認めなければならないとされているものです。
具体例としては、
①は、殺人強盗などの重大犯罪を犯したものではないこと
②は、上記のような重大犯罪の前科を有していないこと
③は、例えば窃盗などを繰り返して行っていないこと(前科がなくとも、事実上繰り返し窃盗していたことが明らかになると「常習」に該当)
などの事情があると、権利保釈は認めてもらえません。
④⑤については、その事案によって区々ですが、
不合理な否認事件であったり、逮捕前などに罪証隠滅行為と考えられる行為に至っていたりすると
④⑤の事由に該当すると判断され、権利保釈を認めてもらえません。
二つ目の裁量保釈とは
その名のとおり、権利保釈を認めることができない場合に
裁判官(裁判所)が裁量によって保釈を認めるというものです。
ところで、「保釈」を認めてもらうには、保釈請求をしなければなりません。
保釈請求は、身体拘束されている被告人本人、配偶者、直系親族、兄弟姉妹などもすることができます。
もっとも、弁護人以外からの請求は却下されてしまう可能性がかなり高いようです。
このようなことから、保釈を希望するならば、弁護士に頼んだ方が良いと思います。
この点、国選弁護人においても保釈請求を頼めば、通常は保釈請求してくれるはずですので
わざわざ私選弁護士に切り替える必要はないものと思われます。
しかし、保釈でもっとも重要なのは
弁護人が不利益な事実も含めてのすべての事案を把握していることです。
不利益な事実に対するフォローがないままに保釈請求をしても
「罪証隠滅のおそれがある」などとして、保釈が却下されてしまう可能性が高いからです。
したがって、国選弁護人がほとんど接見に行ってくれない場合や
国選弁護人に事件の内容について質問しても、あまり事案の内容を把握していないと感じられる場合には、
私選弁護士を選任することも考えてもよいかもしれません。
また、保釈されるか否かというのは、極めて重要な事項ですので
起訴前から保釈を頼んでいたのに、起訴後、直ちに保釈請求をしてくれないときなどには
やはり動きの良い弁護士に切り替えることを考えてもよいかもしれません。
「私選弁護人の選び方」
やはり、保釈請求を数多く経験している弁護士が良いというのは当然です。
また、前述のように、保釈される場合、保釈保証金が必要になることになりますが
その金額は、少なくとも150万円(裁判が無事終われば全額返還されます)は必要になります。
依頼人としては、この保釈保証金もできる限り低額に抑えてもらうことのほうが利益になるのは当然です。
したがって、そのような保釈保証金を低額に抑えてもらうために
裁判官としっかり交渉してくれる弁護士が良いと思います。
この点、弁護士の中には、保釈請求をする場合、
成功報酬として、保釈保証金の20パーセント程度を支払わなければならないという契約をするものがあります。
しかし、このような契約の場合、
弁護士にとっては、保釈保証金の額が高額になればなるほど報酬が増えることになるため、
保釈保証金を低額に抑えるための交渉をしない可能性があると言わざるを得ません。
したがって、このような成功報酬を定めるような弁護士は、あまりお勧めできません。
なお、多額な保釈保証金を準備することなんかできないという方もいると思います。
しかし、そのような方のために保釈保証金を融資してくれる団体があります。
融資手数料としては、融資金額によって異なりますが、だいたい5万円~7万円程度です。
詳細は、一般社団法人日本保釈支援協会のホームページhttp://www.hosyaku.gr.jp/?gclid=CJ-i8YLx6qcCFQTabgodWiSpaQ をご覧ください。
この点、弁護士によっては、上記団体を使用する場合には、保釈請求はできないと断る者もいるようです。
その理由としては、
「融資手数料が高額すぎる」というものをよく耳にします。
確かに融資手数料は安いものではありません。
しかし、上記手数料は、利息制限法に抵触しておらず、適法な範囲のものに留まっており
手数料が高いとか安いとかは、依頼人が判断すべき事項にすぎません。
それを弁護人が高すぎるなどと言って、保釈請求を断るというのは、
依頼人の利益を無視した弁護活動であるとしか評価できないものです。
したがって、保釈制度の説明を求めたときなどに、
そもそも日本保釈支援協会の存在を教えてくれない弁護士や
上記団体を利用する場合には、保釈請求はできないなどと断るような弁護士
に依頼するのは辞めたほうが良いと思います。