突然、相手が警察に行った、被害届を出したと言っている、あるいは警察から連絡が来たという状況になると、多くの方は、すぐに逮捕されるのではないか、このまま前科がつくのではないか、この先どうなるのかと強い不安を抱えます。もっとも、被害届が出されたこと自体で、その時点の結論が決まるわけではありません。まずは、被害届とは何か、告訴とはどう違うのか、いま何が起きているのかを落ち着いて整理することが大切です。
刑事事件では、被害届が捜査のきっかけになることが多く、その後の対応によって見通しが変わることがあります。被害届が出された段階なのか、すでに警察が事情を聴き始めているのか、これから取調べや示談が問題になるのかによって、考えるべきことは変わります。このページでは、被害届とは何か、被害届が出された後の流れ、逮捕との関係、取調べや示談への向き合い方を順番に整理します。
被害届とは何か
被害届とは、一般に、被害者が捜査機関に対して犯罪の被害に遭った事実を申告するものです。刑事事件では、この申告が捜査の端緒となり、警察が事情を確認し、関係者から話を聴き、資料や証拠を集める流れにつながっていくことがあります。
そのため、被害届が出されたかどうかは、事件の始まりとして大きな意味を持つことがあります。ただし、被害届が出されたことだけで、有罪や前科が決まるわけではありません。そこから先に、捜査、取調べ、逮捕の要否、起訴・不起訴などが別に判断されていきます。
被害届と告訴の違い
被害届と告訴は同じものではありません。被害届は、被害に遭った事実を捜査機関に申告するものです。これに対し、告訴は、犯罪事実を申告したうえで、犯人の処罰を求める意思を示すものです。
実際の相談では、この二つが一緒に受け止められていることもありますが、法的な意味は同じではありません。とくに、一部の犯罪では、告訴がなければ起訴できない場合があります。そのため、相手が被害届を出した段階なのか、告訴までしているのかによって、今後の見え方や対応の考え方も変わってきます。
被害届が出された後の流れ
被害届が出されると、警察は内容を確認し、必要に応じて被害者や関係者から事情を聴き、やり取りの記録や資料、客観的な証拠を集めながら、事件としてどう扱うかを検討していきます。被害者の話だけで直ちに結論が出るわけではなく、ほかの資料や関係者の説明も含めて見られることになります。
そのため、被害届が出されたという話を聞いたときには、すぐに最悪の結論を決めつけるのではなく、いま捜査が始まっているのか、警察からの呼出しがありそうなのか、何が争点になりそうなのかを整理することが大切です。
被害届が出されたら必ず逮捕されるのか
そのようにはいえません。逮捕は、被疑者の身柄を拘束する強制処分であり、被害届が出されたこととは別に判断される問題です。裁判官が、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、さらに逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断した場合に、逮捕状が発付されるのが原則です。
したがって、被害届が出されたからといって、必ず逮捕になるわけではありません。在宅のまま捜査が進む事件も少なくありません。ただし、軽く考えて放置してよいという意味でもなく、今どの段階にあるのかを早めに確認することが重要です。逮捕の流れが不安な方は、逮捕された方へも参考になります。
在宅事件として進むこともあります
被害届が出された事件では、逮捕ではなく、まず在宅のまま捜査が進むことがあります。この場合、警察から電話や書面で出頭を求められ、事情を聴かれたり、資料の提出を求められたりする形で進むことがあります。
在宅事件だから安心というわけではありません。逮捕されていなくても、取調べでの受け答えやその後の対応が見通しに影響することがあります。在宅事件については、在宅事件とはもあわせてご覧ください。
取調べで知っておきたいこと
被害届が出された事件では、その後に警察から事情を聴かれることがあります。逮捕や勾留をされていない段階では、原則として、出頭を拒んだり、取調べの途中で退去したりできる場面があります。他方で、取調べの場では、自己の意思に反して供述する必要がないことも重要な権利として認められています。
また、取調べの内容が書面にまとめられる場合には、その内容をよく確認し、違和感があるまま署名しないことが大切です。話していないことが入っていないか、曖昧な部分が断定的に書かれていないかは、丁寧に見る必要があります。取調べについては、取調べを受ける方へも参考になります。
示談が問題になることもあります
事件の内容によっては、被害者側への対応や示談が、その後の見通しに関わることがあります。とくに、起訴猶予が問題になる場面では、被害回復や示談の成立、被害者側の意向などが、犯罪後の事情として見られることがあります。
もっとも、どの事件でも同じように示談が中心になるわけではありませんし、相手方が話合いを望まないこともあります。そのため、被害届が出されたと聞いた段階で、すぐ自分で相手方に連絡すればよいと考えるのではなく、今の段階で何を優先するべきかを整理することが大切です。示談については、示談を考える方へもご覧ください。
ご家族が知っておきたいこと
ご家族としては、被害届が出されたと聞くと、すぐに逮捕なのか、警察から呼ばれるのか、今すぐ何をすればよいのかと不安になると思います。しかし、初期段階では情報が断片的で、結論だけを急いでも状況を見誤りやすいことがあります。
大切なのは、何の件で問題になっているのか、警察から連絡が来ているのか、出頭の話があるのか、すでに相手方がどこまで申告しているのかを整理することです。家族の立場からの初動対応は、家族が逮捕された方へも参考になります。
被害届の段階で弁護士に相談する意味
被害届が出された、あるいは出される可能性がある段階では、まだ事件の全体像が見えていないことが少なくありません。だからこそ、いま何が起きているのか、今後どのような流れがあり得るのか、取調べや示談の可能性をどう考えるのかを早めに整理する意味があります。
また、被害届が出された事件では、何もしないまま様子を見ることが適切な場合ばかりではありません。事情を整理しないまま対応すると、後から不利な動き方になってしまうこともあります。私選弁護人については、私選弁護人とはもご覧ください。
被害届の段階で大切なのは、早く現在地をつかむことです
被害届という言葉を聞くと、それだけで先の悪い結果ばかりを想像してしまいがちです。しかし、実際には、被害届が出された段階、警察からの呼出しがある段階、在宅で捜査が進んでいる段階、逮捕が問題になる段階では、それぞれ考えるべきことが違います。
大切なのは、被害届が出されたという情報だけで悲観しすぎず、今の段階、争点、取調べや示談の可能性を順番に整理することです。その積み重ねが、その後の見通しを考える土台になります。
被害届に関するよくあるご質問
被害届とは何ですか
被害届とは、一般に、被害者が捜査機関に対して犯罪の被害に遭った事実を申告するものです。刑事事件では、この申告が捜査のきっかけになることがあります。
被害届と告訴は何が違うのですか
被害届は被害を申告するものですが、告訴は犯罪事実を申告したうえで犯人の処罰を求める意思を示すものです。一部の犯罪では、告訴がなければ起訴できない場合があります。
被害届が出されたら必ず逮捕されますか
必ず逮捕されるわけではありません。逮捕は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由に加え、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかどうかなどを踏まえて別に判断されます。在宅のまま捜査が進むこともあります。
被害届が出されると、すぐに何が起こりますか
通常は、警察が内容を確認し、必要に応じて被害者や関係者から事情を聴いたり、資料や証拠を集めたりしながら、事件としてどう扱うかを検討していきます。
在宅事件でも注意したほうがよいですか
はい。在宅のまま捜査が進む事件でも、取調べでの説明やその後の対応が見通しに影響することがあります。逮捕されていないから大丈夫と考えて放置しないことが大切です。
警察から呼ばれたら必ず行かなければならないのですか
逮捕や勾留をされていない場合には、原則として、出頭を拒んだり、取調べの途中で退去したりできる場面があります。ただし、今何が問題になっているのかを整理しないまま対応するのは避けたいところです。
取調べでは何に気をつけるべきですか
焦って話を整えようとしすぎず、何が事実として言えるのか、何が記憶にないのか、何が推測なのかを分けて整理することが大切です。調書の内容に違和感があるまま署名しないことも重要です。
被害届が出された段階で示談は意味がありますか
事件の内容によっては意味があります。とくに、起訴猶予が問題になる場面では、被害回復や示談の成立が事件全体の見通しの中で意味を持つことがあります。ただし、相手方の意向や手続の段階も踏まえて考える必要があります。
被害届の段階で弁護士に相談する意味はありますか
あります。被害届が出された、あるいは出される可能性がある段階では、まだ事件の全体像が見えていないことが多いため、いま何が起きているのか、今後どのような流れがあり得るのかを早めに整理することが大切です。

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