横領事件は、預かっていたお金や物を、自分のもののように扱ってしまったときに問題となる刑事事件です。たとえば、会社で管理を任されていた現金を私的に使ってしまった場合、知人から預かった金品を返さずに処分してしまった場合、管理を任されていた売上金を流用してしまった場合などが典型です。横領事件は、他人の物を外から持ち去る窃盗事件とは違い、もともと手元にあった物や管理していた物が問題になる点に特徴があります。
そのため、横領事件では、「最初から自分の手元にあった」という事情がある分、本人が軽く考えてしまいやすい面があります。借りただけのつもりだった、あとで返すつもりだった、一時的に使っただけだったという説明がされることも少なくありません。しかし、実際には、どのような立場でその物を持っていたのか、返すべき義務があったのか、どの時点で自分のもののように扱ったのかが重要になります。横領事件は、見た目よりも法的な整理が難しい事件です。
横領事件とは何か
刑法では、自己の占有する他人の物を横領した場合が横領罪とされ、さらに、業務上預かっていた他人の物を横領した場合は、より重い業務上横領罪が定められています。また、落とし物や忘れ物など、占有を離れた他人の物を自分のものにしてしまった場合には、遺失物等横領罪が問題になります。つまり、同じ「横領」という言葉でも、どのような経緯で物を持っていたのかによって、問題となる条文が違います。
ここで大切なのは、横領事件は「預かっていた物」や「管理を任されていた物」が中心になるということです。たとえば、会社の経理担当者が売上金を流用した場合と、道で拾った財布を届けずに使ってしまった場合では、同じではありません。前者は業務上横領が問題になり得ますし、後者は遺失物等横領として扱われる可能性があります。横領事件のページでは、この違いを混ぜずに理解しておくことが重要です。
横領事件でよくある場面
横領事件として相談が多いのは、勤務先の売上金や預り金の流用、顧客から預かった金銭の使い込み、家族や知人から預かった通帳や現金の無断使用、共同で管理していた財産の処分、落とし物の持ち帰りなどです。特に、会社や店舗での金銭管理に関わる場面では、「業務として預かっていたかどうか」が大きな問題になります。業務上横領にあたると、通常の横領より法定刑が重くなります。
また、横領事件では、民事上の金銭トラブルと刑事事件の境目が問題になることもあります。たとえば、返す約束をしていたお金なのか、管理を委ねられていたお金なのか、自由に使ってよいお金ではなかったのかによって、評価が変わることがあります。だからこそ、横領事件では、誰のお金だったのか、どのような立場で預かっていたのか、返還義務があったのかを丁寧に整理する必要があります。
横領事件で逮捕されることはあるのか
横領事件でも、逮捕されることはあります。特に、被害額が大きい場合、証拠隠滅のおそれがあると見られる場合、勤務先の帳簿や通帳などの資料が重要になる場合、余罪が疑われる場合などには、身柄を取られる可能性があります。一方で、在宅のまま捜査が進む事件もあります。刑事手続では、送致後に検察官が起訴・不起訴を判断し、勾留された場合は原則10日、延長されるとさらに10日という流れがあり得ます。
もっとも、在宅事件だから軽いとは限りません。横領事件は、帳簿、入出金記録、メール、メッセージ、領収書などの客観的資料が重視されやすく、取調べでの説明との整合性が非常に重要になります。警察から連絡が来た段階であっても、何をどう説明するかは慎重に考える必要があります。
横領事件で問題になりやすいポイント
横領事件では、まず「他人の物」であること、「自分が占有していたこと」、そしてそれを自分のもののように処分したことが問題になります。さらに、業務上横領が疑われる場合には、業務として管理を任されていたかどうかも重要です。落とし物や忘れ物の場合は、通常の横領ではなく、遺失物等横領として別に扱われます。横領事件では、この区別を曖昧にしないことが大切です。
また、本人は「返すつもりだった」と説明することがありますが、それだけで直ちに問題がなくなるわけではありません。実際には、返還の見込み、使った経緯、使った後の対応、発覚後の説明など、さまざまな事情が見られます。横領事件は、外形だけで決めつけるのではなく、管理関係や金銭の流れを丁寧に確認することが重要です。
横領事件のその後の流れ
横領事件でも、警察の捜査の後、検察官が起訴するか不起訴にするかを判断します。検察庁の案内でも、不起訴処分には、証拠が不十分な場合の嫌疑不十分や、証拠が十分でも被疑者の年齢、境遇、犯罪の軽重、反省などを踏まえて起訴しない起訴猶予があると説明されています。
横領事件では、被害額、被害回復の状況、被害者との関係、前科前歴、業務性の有無、計画性、帳簿改ざんなど周辺事情の有無によって見通しが変わります。一般論として、被害回復が進んでいるかどうかは重要な事情になりますが、それだけで結論が決まるわけではありません。特に業務上横領が問題になる事案では、処分が重く見られる可能性があるため、事実関係の整理がいっそう大切です。
被害弁償や示談が重要な理由
横領事件でも、被害回復は非常に重要です。流用した金銭を返還できるのか、勤務先や被害者との間でどのような話し合いが可能かは、その後の見通しに影響することがあります。特に財産犯では、被害が回復されているかどうか、被害者がどのように受け止めているかが重要な事情になりやすいです。検察庁の説明でも、起訴猶予の判断では、反省などの情状が考慮されるとされています。
ただし、被害者や勤務先に直接連絡すればよいとは限りません。会社の内部調査が進んでいる場合や、証拠の保全が問題になっている場合には、接触の仕方を誤ると、かえって不利に見られることがあります。横領事件では、事実関係そのものが争点になりやすいため、感情的に動かず、手順を踏んで対応することが重要です。
横領事件で前科はつくのか
前科がつくのは、有罪判決を受けた場合です。不起訴で終われば、一般に前科はつきません。検察庁の案内でも、不起訴処分には起訴猶予などがあり、すべての事件が起訴されるわけではないことが示されています。
もっとも、前科を避けられるかどうかは、初犯かどうかだけでは決まりません。被害額、業務上かどうか、被害弁償の有無、発覚後の対応、資料の残り方など、多くの事情が関係します。横領事件では、本人の説明と客観的資料の整合性が特に重要になるため、安易に説明を変えたり、その場しのぎの対応をしたりしないことが大切です。
家族が横領事件で捜査を受けているときに大切なこと
家族が横領事件で警察から連絡を受けたり、勤務先から使い込みを指摘されたりした場合、まずは何が確定していて、何がまだ不明なのかを分けて整理することが大切です。横領事件は、感情的な対立や職場内の信頼関係の崩れが先に表面化しやすく、事実関係が混ざりやすい事件でもあります。ですが、刑事事件として重要なのは、誰の財産だったのか、どのような権限で管理していたのか、どの範囲で使ったのか、返還状況はどうかといった点です。
特に、会社が関係する横領事件では、家族が勤務先に直接強く働きかけたり、本人に不自然な説明を勧めたりすることは避けた方が無難です。帳簿やメールなどの資料が重要になりやすい事件なので、まずは現状を整理し、今後の見通しを落ち着いて考えることが大切です。
横領事件で弁護士に相談する意味
横領事件では、窃盗や詐欺以上に、「どの罪名が問題なのか」を最初に見極めることが重要です。通常の横領なのか、業務上横領なのか、遺失物等横領なのかによって、法的な位置づけも、見通しの立て方も変わります。しかも、民事上の返還問題や職場内の処分と並行して進むことも多く、刑事だけを切り離して考えにくい場面が少なくありません。
また、横領事件では、被害額の認識、流用の範囲、管理権限の有無、資料の残り方など、細かい事実が大きく影響します。だからこそ、思い込みで「これは窃盗ではないから大丈夫」「返せば終わる」と考えるのではなく、事実に即して整理することが重要です。早い段階で状況を把握し、取調べ対応、被害弁償、勤務先対応の見通しを立てることには大きな意味があります。
千葉で横領事件について弁護士を探している方へ
横領事件は、表面だけ見ると単なる金銭トラブルのように見えることがあります。しかし、預かっていたお金や管理を任されていた財産の扱いが問題になるため、刑事事件として重く受け止められることもあります。特に業務上横領が疑われる事案では、勤務先との関係や社会的影響も大きくなりやすく、慎重な対応が必要です。
千葉で横領事件について不安を抱えている方は、まず、誰の財産だったのか、どのような立場で管理していたのか、いつからどのような流用が指摘されているのか、返還はどこまで進んでいるのかを整理することが大切です。横領事件は、事実関係の整理と初動対応がその後を大きく左右します。あいまいな説明を重ねるより、事実を確認しながら進めることが重要です。
横領事件でよくあるご質問
横領事件と窃盗事件の違いは何ですか
横領事件は、もともと自分が預かっていた他人の物や、管理を任されていた他人の物を、自分のもののように扱ってしまった場合に問題となります。これに対し、窃盗事件は、他人が持っている物を外から持ち去る場合が典型です。手元にあった物なのか、他人の支配下にある物を持ち去ったのかという点が大きな違いになります。
会社のお金を使ってしまった場合は必ず業務上横領になりますか
必ず業務上横領になるとは限りませんが、業務として会社のお金や預り金の管理を任されていた場合には、業務上横領が問題になる可能性があります。どのような立場で管理していたのか、自由に使えるお金ではなかったのか、実際にどのような流れで使ったのかによって判断は変わります。
横領事件では必ず逮捕されるのでしょうか
必ず逮捕されるわけではありません。横領事件では、在宅事件として進む場合もあります。ただ、被害額が大きい場合、証拠隠滅のおそれがあるとみられる場合、勤務先の帳簿や通帳などの資料が重要になる場合、余罪が疑われる場合などには、逮捕される可能性があります。
被害弁償をすれば不起訴になりますか
被害弁償をしたからといって、必ず不起訴になるとは限りません。ただ、横領事件では、被害回復がどこまで進んでいるかが重要な事情になることがあります。特に、被害者との話し合いや返還の状況は、その後の処分や見通しに影響することがありますので、早い段階で適切に整理することが大切です。
家族が横領事件で警察や勤務先から連絡を受けた場合、家族は何をすればよいですか
まずは、誰のお金や物が問題になっているのか、どのような立場で管理していたのか、被害額はいくらとされているのか、返還がどこまで進んでいるのかを整理することが大切です。横領事件では、感情的に勤務先や相手方に連絡すると、かえって状況が複雑になることがあります。まずは事実関係を落ち着いて確認することが重要です。
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