「刑事事件」なんて無縁な人生を送る人がほとんどだと思います。
しかし、ある日突然、真面目に生活してきたあなたが刑事被告人になってしまう可能性もあるのです。
その典型例が、「交通事故」を起こしてしまった場合が挙げられます。
交通事故は、車を運転する人であれば、誰の身の上にも突然舞い降りてくる可能性があるとすら言えるのです。
「えっ?交通事故で刑事裁判になんかなるの??」「交通事故で刑務所に行くことなんかあるの?」
と、思う方もいるかもしれませんが、
交通事故を起こした場合であっても、刑事裁判にかけられ、刑務所に入らなくてはならない場合もあるのです。
では、どういった交通事故の場合に刑事裁判になっってしまったり、刑務所送りになってしまうのでしょうか??
まず、交通事故といっても、単なる物損事故にすぎない場合は、刑事裁判にはなりません(したがって、刑務所に行くことはありません)。
物損事故とは、交通事故の相手方が怪我や死亡したりせず、自動車が壊れたとか物が壊れただけの場合です。
もっとも、物損事故であっても、無免許運転であった場合や、事故後逃走してしまった(いわゆる当て逃げ)場合、酒気帯び運転だった場合、には、道路交通法違反という犯罪が成立するため、
刑事裁判にかけられ刑罰に付されてしまう場合もあります。
この点、私の聞くところによれば、
千葉県では、上記のような場合の物損事故では、
ほぼ100パーセント起訴され、刑事裁判が行われ刑罰に付されることになるという運用がなされているようです。
もっとも、前科などが無ければ、執行猶予が付され、刑務所に直ちに入るということはありません。
次に、交通事故において、事故の相手方や事故に巻き込まれた方が、負傷してしまったり、死亡してしまったりした場合(いわゆる人身事故)乃場合には、自動車運転過失致死傷という犯罪が成立する可能性があるため、
刑事裁判にかけられ、有罪となり刑務所に入らなくてはならない場合があり得ます。
もっとも、人身事故を起こしても、刑事裁判にまで至ることは少ないのが実情のようです。
では、どのような場合に刑事裁判になってしまうのでしょうか??
これには様々な事情が考慮された上で、刑事裁判にかけられるか否かが決定されることになりますが、
特に重視される事情は下記の事情です。
第1に、事故によって生じた結果が重大な場合でしょう。
人が死亡してしまった場合はもちろんのこと、後遺症が残る重大な障害を負わせてしまった場合や、全治1カ月以上の怪我を負わせてしまった場合などです。
第2に、交通事故に対する過失が大きい場合も挙げられます。
たとえば、信号を無視した場合、横断歩道上の人をひいた場合などです。
第3に、被害者側の処罰感情が強い場合も挙げられるでしょう。
以上に掲げた事情を「総合考慮」して、起訴されるか否か(刑事裁判を行うか否か)が決定されることになります。
そして、その中でも、特に結果が重大であり過失も大きく、被害者側の処罰感情が強固のものが、実刑(刑務所に入る)にふされることになってしまうのです。
(なお、被害者が死亡してしまった場合にも、刑事裁判にまでは至らないことも頻繁に見受けられます。あくまで、裁判にまで至るのは、前記事情の総合考慮の上、刑事処罰相当と判断された場合にみです。)
交通事故を起こしてしまった場合にやっておくべきこと
交通事故を起こしてしまった場合、起こしてしまった事故は過去に戻ることができない以上どうしようもありません。
したがって、交通事故を起こした後にできることをしっかりと誠実に行っていきましょう。
では、それは何なのかというと
被害者側の処罰感情の緩和を図るためにできることをしっかりやっておくことしかありません。
先述の刑事裁判にかけられる際に、重視される事情の内、事後的に変えることができるのは、
被害者側の処罰感情だけなのです。
そこで、被害者の元に足しげく通って、繰り返し謝罪をしていくことが重要になってくるのです。
(このことは刑事裁判に付されることが決定してしまった後においても
実刑(刑務所に入る)を避けるためにも、真摯な謝罪を行うことは重要なのです。)
特に、被害者が死亡してしまった場合には、
(遺族に会うのは怖いかもしれませんが)葬儀出席、お墓参り、遺族への謝罪など
ご遺族が許して下さるまで、繰り返し謝罪に行くことです。
私は、これまで数多くの交通事件を受任してきました。
もっとも、その多くは、起訴されてしまってから(刑事裁判にかけられることが決まってから)の依頼でした。
その都度思うのが、依頼者は、被害者側に生じた結果が重ければ重いほど、被害者側関係者に顔を会わせづらいことから、謝罪が不十分なままであることが多いということです。
この謝罪をしっかり行っておけば、起訴されなかったと思われる事件も多くありました。
また、この謝罪をしっかり行っておけば、実刑にはならなかったとも考えられる事件もありました。
交通事故を起こしてしまった方で
特に生じた結果が重大である方は、しっかりと謝罪を尽くすようにしてください。
また、交通事故後における対応等についてご質問等ある方は、お近くの弁護士にまでご相談ください。
ここで少し話は変わりますが、
交通事故を起こし、そのまま逮捕されてしまった場合、
国選弁護人の選任を待つのではなく、私選弁護人を選任することは重要かもしれません。
というのも、国選弁護人が選任されるのは、勾留決定の後であり(10日間身柄拘束)、その期間は自宅に戻ることができないという不利益を負ってしまいます。
逮捕直後に私選弁護人を選任し、勾留を免れるための活動をしてもらえば、
勾留されないで釈放されることも期待できます。
交通事故を起こし、逮捕されてしまった場合には、とりあえずお近くの弁護士に相談してみることが良いかと思います。