取調べでは、聞かれたことに何でも答えなければならないわけではありません。自己の意思に反して供述する必要はなく、分からないこと、覚えていないこと、推測にすぎないことを無理に断定して話さないことが大切です。
取調べでまず確認すべきこと
取調べでは、何を話すかだけでなく、話した内容が供述調書としてどのように残るかが重要です。
在宅事件なのか、逮捕・勾留中なのか、すでに調書が作成されているのかによって、注意すべき点は変わります。まず現在の段階を整理してください。
1 現在の段階
在宅での呼び出しなのか、逮捕・勾留中なのかを確認します。
2 供述方針
認めること、争うこと、覚えていないこと、推測を分けて整理します。
3 調書の確認
署名押印前に、内容が本人の認識と合っているか確認します。
このページで分かること
- 取調べとは何か
- 在宅事件と身柄事件の取調べの違い
- 黙秘・供述拒否の考え方
- 供述調書に署名押印する前の注意点
- 取調べの段階で弁護士に相談する意味
早めに相談した方がよい場面
- 警察から取調べの呼び出しを受けている
- 逮捕・勾留中で取調べが続いている
- 何を話せばよいか分からない
- 供述調書に署名押印してよいか不安がある
- すでに不利な内容を話してしまったかもしれない
取調べとは何か
取調べとは、警察官や検察官などが、事件の事実関係、関与の有無、動機、経緯などについて事情を聴く手続です。
取調べは、逮捕された事件で行われることもあれば、逮捕されず在宅のまま呼び出しを受けて行われることもあります。
取調べを受けること自体で、直ちに有罪や前科が決まるわけではありません。ただし、そこでの受け答えや供述調書の内容が、その後の起訴・不起訴や裁判に影響することがあります。
在宅事件と身柄事件の取調べの違い
在宅事件では、原則として、出頭を拒んだり、取調べの途中で退去したりできる場面があります。一方、逮捕・勾留中は、身体拘束を受けているため、在宅事件のように自由に帰ることはできません。
ただし、逮捕・勾留中であっても、自己の意思に反して供述する必要はありません。取調べを受ける場面にいることと、質問にどう答えるかは分けて考える必要があります。
在宅事件の取調べ
- 警察や検察から呼び出しを受ける
- 原則として任意の手続として進む
- 理由なく放置すると不利に見られる可能性がある
- 次回取調べまでに準備できることがある
逮捕・勾留中の取調べ
- 身体拘束を受けた状態で取調べが続く
- 自由に帰ることはできない
- 自己の意思に反して供述する必要はない
- 弁護士との接見が重要になる
在宅事件については、在宅事件についての解説も確認してください。
黙秘できるのか
取調べでは、自己の意思に反して供述する必要はありません。すべての質問に答えない場合だけでなく、個別の質問に答えないという対応が問題になることもあります。
ただし、黙秘するかどうかは、事件の内容や争点によって慎重に考える必要があります。黙秘が適切な場面もあれば、説明すべき事項を整理したうえで話すことが重要になる場面もあります。
大切なのは、無理に話を作らないこと、分からないことまで埋めようとしないこと、事実と推測を混ぜないことです。
事実・記憶・推測を分けることが大切です
取調べでは、捜査官から話の流れを示されると、それに合わせて説明したくなることがあります。
しかし、実際には見ていないこと、覚えていないこと、後からそう思っただけのことを混ぜてしまうと、供述全体の信用性に影響することがあります。
確かに言えること
自分が実際に見た、聞いた、行ったことを整理します。
記憶にないこと
覚えていないことを、無理に断定して話さないようにします。
推測にすぎないこと
後からそう思っただけの内容を、事実と混ぜないようにします。
何が確かに言えるのか、何が記憶にないのか、何が推測にすぎないのかを分けて考えることが重要です。
供述調書に署名押印する前に確認すること
取調べの内容は、供述調書として書面にまとめられることがあります。署名押印を求められた場合には、自分が話した内容と本当に一致しているかを確認してください。
署名押印前に確認すること
- 話していない内容が入っていないか
- あいまいに話した部分が断定的に書かれていないか
- 前提事情が抜けていないか
- 自分の認識と違う表現になっていないか
- 違和感がある場合、訂正や追加を求めたか
内容に違和感がある場合には、そのまま署名押印しないことが大切です。訂正、追加、削除を求めることが問題になります。
署名押印を拒むことはできるのか
供述調書は、内容に誤りがないと認めた場合に署名押印を求められるものです。
自分の理解と違う、十分に確認できていない、言い回しに違和感があるという場合には、そのまま署名押印しないという対応が重要になることがあります。
署名押印を拒んだからといって、当然に不利な結論になるわけではありません。むしろ、内容が違う調書に署名押印してしまうことの方が、後の手続で大きな問題になることがあります。
録音・録画はすべての事件で行われるわけではありません
取調べの録音・録画は、すべての事件で一律に行われるわけではありません。一定の重大事件や検察官独自捜査事件などで、逮捕・勾留中の被疑者取調べが対象になる場面があります。
録音・録画があるはずだと思い込んで対応するのではなく、自分の事件で対象になるかどうかを個別に確認する必要があります。
録音・録画の対象かどうかにかかわらず、受け答えや供述調書の確認が重要であることは変わりません。
取調べの段階で弁護士に相談する意味
取調べは、その場での説明や書面化が後で大きく問題になりやすい場面です。
呼び出しを受けた段階でも、逮捕後でも、何が争点なのか、どこに注意して受け答えすべきか、調書でどこを確認すべきかを早い段階で整理する意味があります。
逮捕・勾留中の場合には、弁護士が本人と立会人なしで接見し、取調べの状況、体調、家族への伝言、今後の見通しを確認することができます。
接見については、接見についての解説も確認してください。
取調べ対応で坂口靖が確認すること
私は、取調べに関する相談では、まず現在の段階を確認します。在宅で呼び出されているのか、逮捕後なのか、勾留中なのか、すでに供述調書が作成されているのかによって、注意すべき点が変わるからです。
そのうえで、本人の記憶、証拠関係、被害者の有無、示談の必要性、起訴・不起訴の見通し、仕事や学校への影響を分けて整理します。
取調べ対応で確認する主なポイント
現在の段階
在宅事件、逮捕後、勾留中、起訴前のどこにいるかを確認します。
供述方針
認める部分、争う部分、記憶がない部分、推測にすぎない部分を整理します。
供述調書
調書の表現が本人の記憶や説明とずれていないか確認します。
今後の見通し
不起訴、示談、勾留、釈放、仕事や学校への影響を整理します。
当事務所の対応例については、解決実績も確認してください。結果は事案ごとに異なりますが、相談前に対応のイメージを持つ参考になります。
取調べで大切なのは、焦って話を整えようとしすぎないことです
取調べでは、うまく説明しなければならないと思い込んでしまう方が少なくありません。
しかし、実際に大切なのは、話をきれいにまとめることよりも、事実と記憶を崩さないことです。焦って対応するのではなく、いまどの段階なのか、何が争点なのか、どの内容が書面として残るのかを順番に整理することが重要です。

取調べでは、何を話すかだけでなく、供述調書にどう残るかが重要です。在宅で呼び出された方、逮捕・勾留中の方は、次の取調べ前に早めにご相談ください。
