詐欺事件では、お金や物を受け取ったという結果だけで判断してはいけません。相手に何を伝え、その説明を信じた相手が何を渡したのかを確認します。
特殊詐欺への関与を疑われた場合は、本人の役割だけでなく、指示の意味をどこまで理解していたかが問題になります。「アルバイトだと思っていた」という説明も、当時のやり取りや報酬と合わせて見なければなりません。
詐欺と契約上のトラブルは同じではありません
詐欺では、相手をだまし、その説明を信じた相手から財物や財産上の利益を得たことが問題になります。相手が何を信じ、なぜお金や物を渡したのかが中心です。
借金を返せなかった、代金の支払いが遅れた、約束した仕事を完成できなかった。それだけで、当然に詐欺になるわけではありません。
契約時から履行する意思がなかったのか、当時は実行するつもりだったものの、後から事情が変わったのかを分けて考えます。契約書だけでなく、契約前後のメールや入出金の状況も確認します。
一方で、「返すつもりだった」と説明すれば終わるわけでもありません。受け取ったお金の使途や、その後の説明が当初の話と合っているかも見られます。
特殊詐欺では、役割と当時の認識が問題になります
特殊詐欺では、被害者から現金やカードを受け取る役、ATMから現金を引き出す役、被害金を回収する役などに分かれていることがあります。
受け子や出し子という呼び方だけで、直ちに罪名や責任が決まるわけではありません。カードをすり替えたのか、現金を受け取ったのか、ATMで引き出したのかによって、検討される犯罪も変わります。
本人が、通常の荷物の受け取りだと思っていたのか。犯罪に関係する仕事だと分かっていたのか。詳しい手口までは知らなくても、詐欺に関わる可能性を認識していたのかが問題になります。
仕事内容を知らされないまま高額の報酬を示された、偽名を使うよう指示された、受取後すぐ別の人物へ渡すよう言われた。このような事情は、本人の認識を考える材料になります。
一度だけ関与したのか、同じ仕事を繰り返していたのかも確認します。回数だけで決まるわけではありませんが、二回目以降にどのような説明を受けていたかは無視できません。
メッセージ、送金記録、移動の記録を確認します
詐欺事件では、本人の説明と客観的な記録を分けて見ます。LINE、Telegram、メール、通話履歴、口座の入出金履歴などが確認の対象になります。
特殊詐欺では、集合場所、受取場所、ATM、報酬の受渡しに関する記録も問題になります。防犯カメラ、交通系ICカード、位置情報が確認される場合もあります。
契約に関する事件では、契約書、請求書、見積書、事業計画、会計資料を確認します。相手へどのような説明をし、当時どこまで実現できる状況だったのかを見ます。
| 問題となる場面 | 中心となる確認事項 | 主な資料 |
|---|---|---|
| 個人間の貸借・売買 | 契約時に何を説明し、履行する意思があったか | 契約書、メール、送金記録 |
| 会社の取引 | 取引内容、請求の根拠、当時の事業状況 | 請求書、稟議書、会計資料 |
| 受け子・回収役 | 受取物の内容と、指示の意味をどう認識していたか | メッセージ、通話履歴、防犯カメラ |
| 出し子 | カードや口座の入手経緯と、引出しの認識 | ATM映像、口座記録、位置情報 |
| 共通する事項 | 報酬、関与回数、指示役や共犯者との関係 | 送金履歴、端末データ、移動記録 |
メッセージや口座記録を削除してはいけません。関係者へ連絡し、説明を合わせることも避けてください。かえって証拠への働きかけを疑われる原因になります。
逮捕か在宅捜査かは、事件名だけでは決まりません
警察から連絡を受けた後の確認
- 警察から聞いた事件の内容を記録する
- 端末、口座、契約に関する資料を保存する
- 関与した経緯と当時の認識を整理する
- 取調べで説明する内容を確認する
- 被害回復や示談の進め方を検討する
詐欺事件でも、逮捕される場合と、在宅のまま捜査される場合があります。特殊詐欺への関与を疑われたというだけで、身柄拘束が決まるわけではありません。
住居や連絡先が明らかか、呼び出しに応じているか、共犯者や被害者へ接触していないか、証拠を隠すおそれがあるかなどが確認されます。
警察からの呼び出しが任意であっても、軽く考えるべきではありません。取調べの前に、誰から、どのような説明を受け、何をしたのかを記録と照らします。
指示役やほかの関係者の説明に合わせる必要はありません。覚えていないことを推測で補わず、自分が知っていたことと、知らなかったことを分けて説明します。
被害者への返金や連絡は、方法を決めてから行います
被害金の返還や被害弁償は、その後の処分を考える事情になる場合があります。ただし、返金をすれば詐欺が成立しなくなるわけではありません。
示談が成立しても、必ず不起訴になるとは言えません。被害額、関与の程度、本人の認識、過去の経緯なども含めて判断されます。
本人や家族が被害者へ直接連絡すると、威圧や証拠への働きかけと受け取られるおそれがあります。被害者の住所や連絡先を無理に探すことも避けてください。
被害者が複数いる場合や、本人が被害金の一部しか受け取っていない場合もあります。誰に、どの範囲で被害弁償を申し出るかは、事実関係を確認してから決めます。
会社の取引と刑事事件は分けて確認します
会社の契約や請求をめぐり、詐欺ではないかと指摘される場合があります。取引先に損害が出たというだけで、当然に詐欺罪が成立するわけではありません。
契約時の説明が事実と違っていたのか、本人が違うと分かっていたのか、その説明によって相手が支払いをしたのかを確認します。後から事業が悪化した場合とは分けて考えなければなりません。
会社内部で任された仕事や権限が問題になっている場合は、千葉の背任事件もご確認ください。他人の物を無断で持ち去った疑いであれば、千葉の窃盗・万引き事件で説明しています。
財産犯罪全体の違いは、千葉の財産犯罪のページで案内しています。
警察から呼び出された、端末や口座を確認された、被害者への返金を考えているという段階では、相談を検討してください。複数の弁護士から説明を受け、方針や費用を比較して決めても構いません。
