暴行事件でまず確認すべきこと
暴行事件では、相手に手を出した、押した、つかんだ、もみ合いになったという事実だけで、すぐに逮捕や前科が決まるわけではありません。まずは、暴行として扱われているのか、相手にけががあり傷害まで問題になるのか、警察から呼び出しが来ているのか、すでに逮捕が問題になっているのかを整理することが大切です。
特に、暴行事件では感情的な対立が背景にあることが多く、取調べでの説明や被害者対応、示談の進め方によって見通しが変わることがあります。軽く考えて放置するのでも、悲観してあきらめるのでもなく、今の段階で何を優先すべきかを確認する必要があります。
突然、相手ともみ合いになった、手を出してしまった、相手が警察に行った、警察から連絡が来たという状況になると、多くの方は、これは暴行になるのか、傷害になるのか、すぐに逮捕されるのか、この先どうなるのかと強い不安を抱えます。
もっとも、暴行事件になったからといって、その時点ですべての結論が決まるわけではありません。まずは、暴行とは何か、傷害とはどう違うのか、今どの段階にあるのかを落ち着いて整理することが大切です。
暴行事件では、その場の感情的な対立だけを見て軽く考えてしまうことがあります。しかし、被害申告、取調べ、逮捕の有無、示談の進み方などによって、その後の見通しは大きく変わることがあります。
このページでは、暴行とは何か、傷害との違い、逮捕と在宅事件、取調べで知っておきたいこと、示談や不起訴の考え方を順番に整理します。
暴行とは何か
暴行とは、相手の身体に対して不法に有形力を行使する行為をいいます。典型的には、殴る、蹴る、突き飛ばす、胸ぐらをつかむ、腕を強く引っ張るといった行為がまずイメージされやすいと思います。
刑法では、暴行を加えても人を傷害するに至らなかった場合に暴行罪が成立するとされています。したがって、けががない場合や、けがに至ったとまではいえない場合でも、行為の内容によっては暴行事件として扱われることがあります。
もっとも、実際の事件では、どのような行為があったのか、相手にどのような影響が生じたのか、双方の言い分に食い違いがあるのかを確認する必要があります。
傷害との違い
暴行と傷害は、近いようで同じではありません。暴行は有形力を加えたこと自体が問題になるのに対し、傷害は、その結果として相手の身体に傷害が生じた場合に問題となります。
そのため、最初は暴行のつもりで考えていても、相手にけがが生じていたり、通院や治療が必要な状態になっていたりすると、傷害として扱われることがあります。
反対に、接触があったとしても、結果や証拠の整理によって、どの犯罪が問題になるのかは変わることがあります。診断書、防犯カメラ、目撃者の話、事件直後のやり取りなどが重要になることもあります。
傷害事件について確認したい方は、傷害事件のページもあわせてご覧ください。
暴行事件で問題になりやすい場面
暴行事件で多いのは、口論や感情的な対立の中で、相手を押した、つかんだ、たたいたという場面です。職場、家庭、交際関係、知人同士のトラブル、飲食店や路上でのもめごとなど、さまざまな場面で問題になります。
その場では大ごとではないと思っていても、相手が後から警察に相談したり、周囲の人が通報したりして、刑事事件として動き始めることがあります。
そのため、その日に逮捕されていなくても、後日になって警察から連絡が来ることは珍しくありません。警察から連絡が来た場合には、何の件で呼ばれているのか、被疑者としての呼び出しなのか、参考人としての事情聴取なのかを確認することが大切です。
警察からの呼び出しについては、警察から呼び出しを受けた方へも参考になります。
暴行事件では逮捕されることがあるのか
暴行事件でも、事案によっては逮捕が問題になることがあります。ただし、暴行事件だから必ず逮捕されるわけではありません。
逮捕は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、さらに逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかどうかなどを踏まえて判断されます。
たとえば、被害者との接触が続いている場合、関係者への働きかけが疑われる場合、警察からの呼び出しに応じない場合、本人の住居や生活状況が不安定な場合などには、身柄拘束が問題になることがあります。
もっとも、すべての暴行事件で逮捕されるわけではなく、在宅事件として進むこともあります。逮捕の流れが不安な方は、逮捕後の流れも参考になります。
逮捕された場合の流れ
暴行事件で逮捕された場合には、時間の流れが非常に早くなります。警察は逮捕から48時間以内に、釈放するか、検察官へ身柄を送るかを判断します。
その後、検察官は身柄を受け取ってから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に、勾留請求、起訴、釈放のいずれかを判断します。
勾留が認められると、さらに身柄拘束が続くことがあります。仕事、学校、家庭への影響が大きくなりやすいため、逮捕が問題になった場合には、できるだけ早い段階で状況を整理することが重要です。
勾留については、勾留のページもあわせてご覧ください。
在宅事件として進むこともあります
暴行事件では、逮捕されず、在宅のまま捜査が進むことも少なくありません。この場合、警察から電話や書面で出頭を求められ、事情を聴かれたり、必要な資料の提出を求められたりしながら進むことがあります。
逮捕や勾留をされていない被疑者は、原則として、出頭を拒んだり、取調べの途中で退去したりすることができます。
ただし、在宅事件だから安心というわけではありません。取調べでの説明や、その後の被害者対応が見通しに影響することがありますので、逮捕されていないから大丈夫と考えて先送りにしないことが大切です。
在宅事件については、在宅事件・身柄事件もあわせてご覧ください。
取調べで知っておきたいこと
暴行事件で取調べを受ける場面では、感情的なやり取りの一部だけが強く切り取られやすく、その場の流れに合わせて説明してしまうことがあります。
しかし、実際には、何が事実として言えるのか、何が記憶にないのか、何が自分の受け止めや推測にすぎないのかを分けて整理することが大切です。
また、被疑者には、自己の意思に反して供述する必要がないことが告げられます。すべてについて黙る場合だけでなく、個別の質問について答えないという対応が問題になることもあります。
供述が書面にまとめられる場合には、その内容をよく確認し、話していないことが入っていないか、曖昧な部分が断定的に書かれていないか、前後の事情が抜けていないかを見る必要があります。内容に納得できないまま署名押印をする必要はありません。
取調べについては、取調べのページも参考になります。
正当防衛が問題になることもあります
暴行事件では、相手から先に手を出された、自分や家族を守るために押し返した、相手を止めようとしただけだったという相談もあります。このような場合には、正当防衛や過剰防衛が問題になることがあります。
もっとも、本人が正当防衛だと思っていても、当然に認められるわけではありません。相手からの攻撃の有無、危険の切迫性、防衛行為の必要性、行為の相当性などが問題になります。
けんかの延長で双方が攻撃し合っているような事案では、正当防衛の主張が簡単に認められるとは限りません。防犯カメラ、目撃者、けがの部位、当時の発言、事件前後の行動などを確認することが重要です。
示談が問題になることもあります
暴行事件では、被害者側への対応や示談がその後の見通しに大きく関わることがあります。
もっとも、示談は単に金額だけの問題ではありません。謝罪の受け止め方、相手方の意向、今後接触しないことをどう整理するか、支払方法をどうするかなども含めて考える必要があります。
また、どの事件でも同じように示談が進むわけではありません。相手方が話合いを望まないこともありますし、感情的な対立が強い場合には、本人や家族が直接連絡することで、かえって状況が悪化することもあります。
示談を考える場合には、今どの段階で何を優先すべきかを整理することが大切です。示談については、示談のページもご覧ください。
不起訴の見通しはあるのか
暴行事件でも、不起訴となることはあります。もっとも、当然にそうなるわけではなく、証拠関係、供述の内容、被害者側の意向、被害回復の有無、事件後の対応などを踏まえて判断されます。
たとえば、暴行の事実自体に争いがある場合、相手方の説明と客観証拠が合わない場合、正当防衛が問題になる場合には、証拠関係の整理が重要になります。
一方、暴行の事実を認める事件では、起訴猶予が問題になることがあります。起訴猶予が問題になる場面では、犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、情状に加え、犯罪後の情況が見られます。
被害者への謝罪、被害弁償、示談の成立は、その中で重要な事情になり得ます。そのため、不起訴を考える場面では、単に軽い事件だから大丈夫と考えるのではなく、いま何が問題となっていて、どのような事情を整理する必要があるのかを見ていくことが重要です。
不起訴については、不起訴のページも参考になります。
前科を避けたい場合に考えること
暴行事件で前科が付くのは、有罪判決が確定した場合です。不起訴で終われば、その事件について有罪判決は出ないため、前科は付きません。
もっとも、前科を避けたいからといって、何もしないまま待っていればよいわけではありません。暴行の事実関係、証拠関係、被害者対応、示談の可能性、取調べでの供述内容などを早い段階で整理する必要があります。
特に、被害者がいる事件では、謝罪や被害回復の進め方が重要になることがあります。焦って直接連絡するのではなく、相手方の負担や感情にも配慮しながら、適切な方法を検討することが大切です。
ご家族が知っておきたいこと
ご家族としては、暴行で警察沙汰になったと聞くと、すぐに逮捕なのか、前科がつくのか、何をすればよいのかと不安になると思います。
しかし、初期段階では情報が限られていることも多く、結論だけを急いでも見通しを立てにくいことがあります。
大切なのは、何が問題になっているのか、被害申告があるのか、出頭の話があるのか、けがの有無はどうか、被害者対応が必要なのかを順番に整理することです。
本人が逮捕されている場合には、どこの警察署で、どのような容疑で、いつ逮捕されたのかを確認する必要があります。家族の立場からの初動対応は、家族が逮捕されたらも参考になります。
暴行事件で弁護士に相談する意味
暴行事件では、早い段階で事情を整理することに意味があります。何が争点なのか、暴行として見るべき事案なのか、傷害まで問題になるのか、被害者対応をどう考えるのか、取調べでどこに注意するべきかは、事件によって違います。
また、被疑者本人だけでなく、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹も独立して弁護人を選任することができます。
暴行事件は、軽く見えてしまいやすい一方で、その後の説明や対応によって見通しが変わることがあります。だからこそ、感情的に動く前に、今の段階で何を優先すべきかを整理することが大切です。
弁護士を自分で選んで相談・依頼したい場合には、私選弁護人のページもご覧ください。
暴行事件対応で弁護士坂口靖が大切にしていること
暴行事件の相談では、「手を出してしまった」「相手が警察に行った」「警察から呼び出された」という事実だけで、すぐに悪い結果を想像してしまう方が少なくありません。
しかし、暴行事件では、まず何が起きたのかを細かく分けて見る必要があります。相手にけががあるのか、診断書が出ているのか、暴行の態様はどの程度なのか、相手からの攻撃や挑発はあったのか、正当防衛や過剰防衛が問題になるのかによって、見通しは変わります。
当事務所では、事件名だけで判断するのではなく、事実関係、証拠関係、被害結果、本人の供述、相手方の意向、家族の支援体制、仕事や生活への影響を一つずつ整理することを大切にしています。
暴行事件では、早期の示談や被害弁償が重要になることがあります。一方で、事実関係に争いがある事件では、安易に認めるのではなく、防犯カメラ、目撃者、通話・メッセージ履歴、現場状況などを確認し、争点を丁寧に整理する必要があります。
また、本人やご家族が焦って相手方に直接連絡すると、かえって相手方の不安や反発を強めてしまうことがあります。そのため、示談を考える場合でも、連絡方法や時期を含めて慎重に検討することが大切です。
当事務所では、これまで対応してきた刑事事件の一部を解決実績として掲載しています。結果は事案ごとに異なりますが、相談前に具体的な対応例を確認したい方は、あわせてご覧ください。
暴行事件で大切なのは、早い段階で現在地をつかむことです
暴行という言葉だけを聞くと、たいしたことはないと考えてしまうこともあれば、逆にもう終わりだと感じてしまうこともあります。
しかし、実際には、被害申告の段階なのか、在宅で捜査が進んでいるのか、逮捕が問題になっているのか、示談を考えるべき段階なのかによって、取るべき対応は変わります。
大切なのは、今の段階、争点、被害者対応の必要性を順番に整理し、その時点で必要な対応を整えていくことです。その積み重ねが、その後の見通しを考える土台になります。
暴行に関するよくあるご質問
Q 暴行とは何ですか
A 暴行とは、相手の身体に対して不法に有形力を行使する行為です。刑法では、暴行を加えても人を傷害するに至らなかった場合に暴行罪が成立するとされています。
Q 暴行と傷害は何が違うのですか
A 暴行は有形力を加えたこと自体が問題になるのに対し、傷害はその結果として相手の身体に傷害が生じた場合に問題になります。けがの有無や内容が、どの犯罪が問題になるかを分ける大きなポイントになります。
Q 暴行事件では必ず逮捕されますか
A 必ず逮捕されるわけではありません。逮捕は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由に加え、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかなどを踏まえて判断されます。在宅のまま捜査が進むこともあります。
Q 逮捕された後は、どのくらいで次の判断がされますか
A 警察は逮捕から48時間以内に釈放するか検察官に送るかを判断し、検察官は身柄を受け取ってから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に、勾留請求、起訴、釈放のいずれかを判断します。逮捕直後の数日は特に重要です。
Q 在宅事件では警察の呼出しを断れますか
A 逮捕や勾留をされていない被疑者は、原則として、出頭を拒んだり、取調べの途中で退去したりすることができます。ただし、何が問題になっているのかを整理しないまま対応するのは避けたいところです。
Q 取調べでは何に気をつければよいですか
A 何が事実として言えるのか、何が記憶にないのか、何が推測なのかを分けて整理することが大切です。供述が書面にまとめられる場合には、その内容をよく確認し、納得できないまま署名押印しないことが重要です。
Q 暴行事件では黙っていてもよいのですか
A 自己の意思に反して供述する必要はありません。取調べでは、そのことがあらかじめ告げられます。もっとも、何をどこまで話すかは、事件の内容や争点との関係で慎重に考える必要があります。
Q 正当防衛なら暴行罪になりませんか
A 正当防衛が成立すれば犯罪は成立しませんが、本人が正当防衛だと思っているだけで当然に認められるわけではありません。相手からの攻撃の有無、防衛行為の必要性、行為の相当性などを、証拠に基づいて確認する必要があります。
Q 暴行事件で示談は重要ですか
A 事件の内容によってはとても重要です。被害者への謝罪や被害弁償、示談の成立は、犯罪後の情況として見られ、起訴猶予や量刑を考えるうえで意味を持つことがあります。
Q 暴行事件でも不起訴になることはありますか
A あります。もっとも、当然にそうなるわけではなく、証拠関係、供述、被害者の意向、示談や被害回復の状況、事件後の対応などを踏まえて判断されます。
Q 家族が先に弁護士を依頼することはできますか
A はい。被疑者本人だけでなく、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹も独立して弁護人を選任することができます。本人が動揺している場面でも、ご家族が先に状況整理を始めることには意味があります。

千葉で刑事事件のご相談に対応しています。逮捕、取調べ、示談、不起訴、早期釈放など、事件の状況に応じて必要な対応を一緒に整理します。
